投稿者：花野かほる さん

　女性は思うまでもなく呟いた。「だるいな。」そう思うのも無理はない。彼女の住まうこの世界、この世はまさに灼熱の色。人の息吹は感じられない。…どこかで蝉が鳴いていた。周囲を見渡すまでもない、運良く右斜めに立つ広葉樹の、上の方の枝に止まっているのが見えた。よくまああんなに一生懸命鳴くものだ。ミーンミンミン、ツクツクボウシ…と。彼ら蝉のその鳴き声はすっかり夏の風物詩ともなっているが、同時に一般の人にとっ…